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MURA18実行委員

新型コロナを学びに変える5つのアウトドア・マインド

MURA18実行委員会 田辺慎一





「自然・アウトドアの学びとは何か?」


「新型コロナのピンチを学びのチャンスに変えるには?」


新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)が世界を席巻し始めてから半年。

長年のアウトドア経験で身に着いたリスク管理スキルから、

5つのマインドを抽出し、下記の仮説を検証してきました。



【仮説】アウトドアの経験、特にリスク管理スキルは、


    新型コロナのリスクに応用して役立たせることができる



【新型コロナを学びに変える5つのリスク管理マインド】


① 生きること(自分の命を守ること)に主体的になる


② 常識、想定にとらわれない思考


③ いかなる状況でも最善を尽くす


④ 常に仮説検証を行い、判断していく


⑤ 率先行動者であること



5つのマインドは、日々の実践の中で「けっこう役に立つかも」と実感しています。

未だ検証中ではありますが、この場にてご紹介します。長文、ご容赦ください。



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① 生きること(自分の命を守ること)に主体的になる



アウトドアの環境(ここでは都市救急の及ばない=救急車が来られない環境)では、


受動的であること=高リスク


です。


そもそも、アウトドアにいる時点で、

社会インフラ(電気、水道、ガス、情報、医療機関、警察、快適な物理環境空間など)や

社会関係資本(その時点までの人とのつながり、肩書、所属など)への依存から

フリー(独立)な状態なので、いわゆる裸の、無防備な状況です。


アウトドアを楽しむことは、つまり、



あえてリスクをとってそのような環境で活動することを選択している


となります(ソロの活動はなおさらです)。


普通、アウトドア活動は、そのような状況も含めて楽しむので、

主体的なケースがほとんどです。


よって、われわれは、


新型コロナのリスク状況下でも「主体的に生きること」ができます。




② 常識、想定にとらわれない思考



自然の中では、あらゆるものが刻一刻と変化しています。

天候といった外部物理環境、自分自身のメンタル、フィジカル、装備、時間。


自然環境は、極論すると同じ条件がありません。

ほとんどは、自分の想定を超えない範囲での活動を目指しますが、

時には想定外のことが起こることもあります。


ある事例で学んだことが、あてはまらないケースもよくあります。


たとえば、昨年はあった水場が枯れていたとか、天候の急変、不慮のケガ、

ハチなどの野生生物による負傷、道に迷って夜になったといった場合には、

その時の状況で可能な選択肢の中から最適な1つを選ばなければなりません。


大体ドツボるのは、初めて直面するケースなので、そのような際にも

パニックになったりしないように、あるいは最悪手を選ばないように、

ある意味矛盾していますが、想定外が起こることを前提に行動するようになります。


よって、われわれは、


新型コロナにおいても日々直面する未経験な状況を冷静・客観的に捉え、

柔軟に思考し行動できます。






③ いかなる状況でも最善を尽くす



想定外の状況に陥った時に、あきらめないで精一杯やれることをやるのが、

自然と向き合う基本姿勢となります。


また、たとえば、テントを張るときに、寒くて疲れていたとしても、張る場所、

風の向き、入り口の方向、ペグの位置、深さ、張り綱の引っ張り具合などなど、

妥協しないでその時のベストを尽くすのが、基本となります。


夜に雨や風が強くなってテントが破損した場合、すべては自分に降りかかってくる、

その責任はすべて自分にあります。


自然の摂理として、その時の最善を尽くしても対応できないこともありますが、

そのような場合でも自分ができることはやはり最善を尽くすこと、です。


よって、われわれは、


いかなる状況でも最善を尽くすことができます。





④ 常に仮説検証を行い、判断していく



上記と重複しますが、刻一刻と変化する、また予測ができない状況や

想定外もしばしば起こる自然の中では、1つの判断に長く固執するのは危険です。


シビアな状況では特に、状況の変化に合わせ、仮説を立て、検証し、

次にまた仮説を立て、、、と仮説検証と判断を繰り返しながら進んでいくことが

致命的なミスを起こさない秘訣です。


たとえば、地図を読んで現在地を把握しながら進んでいくのは、

すべて仮説検証の繰り返しです。


ここから約1km、歩いたら15分くらいで、右から大きな沢が合流するな、

と仮説を立てて、実際1kmあるいは15分くらい歩いたところで検証します。

あっていたら、さらにその先の地形から仮説を立てて、、といった感じです。


われわれは、


新型コロナ状況下においても、その時々に得られる情報を精査し、

仮説を立て、検証し、判断・行動していくことができます。






⑤ 率先行動者であること



これは緊急時に、正常性のバイアス(自分は大丈夫と思いこむ)、

先入観・偏見・固定観念の罠、思考停止に陥らず、

すぐに判断し行動がとれること、です。


集団で行動中、道が間違っていると思ったときに、メンバーに

「道が間違っていると思うんだけど」と、気付いた時点でそう言えるか。


滑りそうな道が出てきたときに、ほかのメンバーが滑らないような

声かけや対応がとれるか。


けが人が出た時に、経験や知識に不安があっても、まずは率先した行動がとれるか。


これは、イノベーター理論でいうところのイノベーター(冒険心にあふれ、

新しいものを一番最初に採用する人)にあたる行動です。


われわれは、


「新型コロナのピンチをチャンスに変える行動」に率先して取り組むことができます。





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アウトドアの学びの本質

~変化するリアルな世界で「自分」をアップデートする



もし、今の社会で求められているのが、セルフイノベーション(自己変革)を

起こす力であるならば、アウトドアは効果的な面があると思います。



社会や企業に一大変革を起こすイノベーションではなく、個人一人ひとりが、

自分自身に関する小さな変化・行動を起こすようになる。



特にコロナショックのような破壊力の大きい変化を目の当たりにした時に

正常性のバイアスにかからず、小さい範囲でも率先して判断・行動を起こせるような

能力は、アウトドアを通して自然から学んできた、わたしたちの大きな財産です。


これからも自然から大いに学び、withコロナを乗り切っていきましょう。





【執筆者】


田辺慎一 MURA18実行委員会・大会プロデューサー

北海道生まれ。帯広畜産大学山岳部出身。自然資本主義。

北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了(博士・地球環境科学)。


生態学の視点から、人と自然の関係をデザイン・提案することがライフワーク。

日本生態学会論文賞(2002年)、日本森林学会奨励賞(2006年)受賞。


登山、薪割り、自家菜園、山スキー、本厄の年に始めたトレランで runに目覚め、妙高の18の山間集落を駆け巡る超ハードな山岳ロードマラソン「MURA18」をプロデュース。


ULTRA TRAIL Mt.FUJI(富士山周辺の山々を160km走る日本最大のトレイルランニングレース)年代別1位経験有。


ボルネオ島のキナバル山(標高4,095m)を中心とした国際的な生態系観測プロジェクトに参画、現地集落に1年半ホームステイし長期滞在型テレワークを経験。


国際的な生物多様性観測プロジェクト(IBOY:International Biodiversity Observation Year)において、マレーシア、インドネシアでの生物調査、現地スタッフ対象の生物同定トレーニングコースのマネジメント・講師を担当。


ロシア、中国、韓国、日本の里山を対象とした生物多様性観測プロジェクト(SBOY:SATOYAMA Biodiversity Observation Year)を提案、共同研究を推進。


北海道大学低温科学研究所研究員、金沢大学自然計測応用研究センター21世紀COE研究員、総合地球環境学研究所共同研究員、十日町市立里山科学館越後松之山「森の学校」キョロロ研究員を経て現職。




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